リチウムイオンバッテリー(リン酸鉄含む)向けのBMS回路基板
本基板は基本となる充電のほか、5V出力と電池残量計機能を持ちます。電池パックと組わせて電源システムとしてお使いいただくことが可能です。
基本的な機能
- 充電(CV13.9V, CC3A)
- 5V5A出力
- 電圧保護
- 電流保護
- 温度保護
- 残量計の外付けが可能
- バッテリーの残量、劣化情報のシリアル出力
残量測定について
通常、残量計はリチウムイオン電池パックに組み込まれています。残量計には事前に電池セルや電池パックの特性データが書き込まれ、電池パック出荷前の充放電試験を経て運用開始となります。これは試験目的の電池に残量計を組み込みたい場合には高コストとなります。特に電池の特性評価は高度な試験環境や機材、そして短縮できない測定時間が必要となるためです。本基板では外付け可の残量計を採用しているため、こうしたコストを避け、
- 試用したい電池パックの試用、充放電評価
- 残量計無しの電池パックを採用
といった要件でお使いいただきやすくなっております。(特性評価のデータを入れ込むことなく、いくつかの電池仕様をセットしたあとに数度の充放電で残量・劣化を比較的高精度で推測していくものとなっております)
残量計について
電池と組合せてから3回程度の充放電では本基板の残量計は初期学習を行います。初期学習完了後も毎充電のたびに測定結果と内部アルゴリズムの組合せで残量、劣化情報の更新、補正をし続けます。一例として以下にグラフを示します。
これはあるバッテリーを4回充放電した際のログデータをグラフ化したものです。グラフに関する情報は以下のとおりです。
- 対象バッテリー: 1セル、リン酸鉄リチウムイオンバッテリー、公称容量6000mAh
- 赤いライン: 残量計の情報です。現在の最大充電容量mAh(電池関連の用語でFCC(Full Charge Capacity)と呼びます)を示しています。
- 青いライン: 残量計の情報です。現在の残量%を示しています。定電流での充放電を行っているため、変化は直線になっています。
- 緑の枠: FCCの変化部分を囲っています。これは充電の終了あたりで残量計がデータを更新していることを示します。
左端の緑枠は初回の充電のため変化が大きいです(残量計に公称容量6000mAhをセットしているため、動作初期は公称容量=最大充電容量=6000mAhとして動作します)。充電回数をこなすたびにFCCの変化量は減っていき、実際の容量(≒公称容量)とほぼ同値となります。この補正は残量計を使用している限り毎回行われます。FCCは、公称容量との比から、現在の劣化率を確認することが出来ます。
その他のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの充電の例
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは従来のものと比べて電圧が低く、充電電圧はセルあたり4.2Vや4.1Vではなく最大でも3.6Vという場合が多いです。ここではリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを2パターンで充電した様子をご紹介します。(充電の対象はリン酸鉄リチウムイオンセルの4S2Pバッテリー、公称12.8V/12Ahです。充電方式はCC/CV充電です。)
まずパターン1の充電(グラフ2)です。約11.3Vから開始した電池電圧は充電終盤で指定の14.4Vに達します。ここで充電電流は急激に落ち、充電終了電流まで低下したところで充電完了となりました。コバルト系などではCV電圧までの到達はもう少し早く、充電電流の降下はもう少し緩やかです。リン酸鉄リチウムイオンバッテリーでは他のいくつかのメーカーのものも↑グラフと同様の結果を確認しました。 次に、充電電圧を13.9V(セルあたり3.475V)に下げて充電を行ってみました(グラフ3)。充電電圧を下げることは電池の安全性を高めることにつながります。
パターン2(グラフ3)では充電開始から中盤にさしかかる前に指定の13.9Vに到達し、その後CC13.9Vで充電を行っています。充電電流は6Aから緩やかに降下し、指定の充電終了電流まで低下したところで充電完了となりました。注目したいのは緑ラインの温度です。パターン2は充電電流6Aと、パターン1よりも大きいですが、それでも電池自体の発熱は低くおさまっています。また、充電電圧を下げても、充電容量はそれほど下がらないことも分かります。 パターン1、パターン2のこうした比較により採用電池の運用方針を検討することもできます。例えば以下のような方針が考えられます。
- 使い勝手を優先し、出来るだけ速い充電
- 安全や寿命を優先し、低めの電圧で充電
なお、充電電圧や充電電流についてはハードウェア変更無し、ファームウェアの調整のみで変更が可能です。 ODS-BMSの残量計は正確な電圧、電流測定と内部アルゴリズムにて残量や劣化の推測を行っています。この電圧、電流測定値は残量計情報としてシリアル通信にて取り出しできるため、電池や機器の試作段階からご利用いただき、機器の消費電力の測定や、機器への組み込みの検討などに活用いただけます。
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